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2023年11月21日火曜日

モーターESC自作の道①

今回から新シリーズです!

今年の6月に掲載した記事からずっとESCを自作する試みは進めていました.

その途中で車高ゲージを作ったり,レシオチェッカーを作ったり寄り道はしていましたがこれもスキルアップに役立ってました


ESC自作に向けて回路図の書き方と基板CADを習得しつつありESCの形になってきたので新シリーズ化してみっました


開発のドナーになってくれる車両はこちら


TRGHPより

スーパーラジコン秋葉原の某店長氏からお借りしたTRG製のFP2となります
i塚さんご協力大変ありがとうございます!

FP2に至った経緯としては
・シャシー構成がシンプルで床面積が広い → いろんな基板を載せたりするのに好都合
・駆動アクスルがリジット → タイヤを外回しして動作確認するときにデフがないと楽

といったいろんな都合で選択しました

さて今までの開発環境をそのままFP2に移植してみたのがこちら
かなりごちゃついてます これで走行は難しそう…

大電流を流す基板と制御用の基板が分かれているので通信用のハーネスが盛り上がってます
この状態でモーターが回転することは確認済みなので電気的な接続はOK


ZEN製 Z0022 レジェンドCカーボディ MCLタイプ
このボディであればキャビン部分が大きくて基板自体は干渉せずに搭載できました
ただハーネスは収まらないのでやはり通線用の基板を自作する必要がありそう

自作ESCを作る上で基板作成スキルは避けて通れないのでこの際覚えることにしました
使用したCADはフリーソフトであるKiCADです.

今回の回路図

回路図を描くスキルも初心者なので全く洗練されてなくて将来悶絶すること間違いなし
ひとまず必要な接続は記載しているのでできることは
  1. 制御基板であるNucleo-G474RE基板とパワー基板のDRV8302を接続するパターン
  2. モーターのホールセンサー、レシーバーからの信号をNucleoボードに入力するパターン
  3. 将来の拡張を見据えてSmartLoggerとの拡張ポートの予約設計

この時点でIOピンに対してネットを入力するのでここを間違えなければ電気的な接続は間違えることがない
よってユニバーサル基板等で実装するよりミスを大幅に削減できます


ネットリストを元にパターンを作成
表裏の2層基板に対して電源線は1mm,信号線は0.75mmとしました
今回の基板には大電流が流れる部分がないのと,高周波数な信号線や差動信号もないのでかなり簡単な基板です.

GNDのベタパターンを追加してひとまず基板検討は完了
今回はピンヘッダとピンソケットとホールセンサー入力用のJSTのZHコネクタのみの実装

基板手配はPCBGOGOにお願いしてみました
初回手配は送料込みで$1という破格の値段
設計をミスしてしまって2回の手配しましたがそれでも5枚頼んで$44程度でした

ミスった模様はこんな感じ
コンデンサと切り欠き位置を間違って思いっきり干渉してます…
ちなみにこの段階ではSmartLoggerの拡張設計もしてなかったので再手配のついでに実施

再手配したものはバッチリ レジストの色も緑にしてみた
やっぱり緑のほうがパターン見やすいし一般的に使われている理由がよくわかりますね


車載状態はこんな感じ

Nucleo基板をオフセットさせたのでボディと干渉するのでカットが必要そう

動作もひとまず問題なくモーターが回転してくれてます

ハードウェア的にはひとまずこれで完了で
これで断線の心配なく安心して実走テストに進めます


ソフトウェア

今回はmtabeさんからのご紹介で新たに名古屋のお友達ができて
その方に多大なるご協力をいただいてモーターのベクトル制御コードを作成しています

現状では自分で書いたコードはプロポの信号を読み取ってモーターに回転指令を与えるところだけです
このあたりでレシーバーの信号を読み取ってる
僅か数十行のコードですが紆余曲折あり、たどり着くまでに数か月勉強が必要でした…
プロポメーカーが変わったときの補正や、デッドバンドの実装はもうひと工夫必要ですが根幹の部分を学べたのであとは小変更でイケそう


現在のモーター制御コードはPLL制御という制御も実装しており
モーターのケースに装着されているホール素子の位置ズレを補正する機能も実装しています
いわゆる”あたり”モーターが関係ないものになるのである意味イコールコンディションにもなるのかなと
モーターチェッカーのTiming測定のこの画面の数値のズレのことです

今後の実走テストのタイミングで
弱め界磁制御や二相変調制御によるモーター動作域の拡大
回生ブレーキによるバッテリーエネルギーマネジメント
を実装していこうとしています

特にブレーキの難しいDD車なので制御を頑張ることでドラビリを確保できるブレーキを見出すことができればいいなと思います

2023年6月1日木曜日

モーターを制御してみたいと考えてみた

車高ゲージの開発の記事からはや2ヶ月ぐらい経ってしまいましたが

 私事ですが4月に第一子が生まれて只今約1か月の育休を取っています.6月1週目から出社再開するのでもうすぐ終わりなんですが…

母子健康に生まれたのですが世の中の男性も育児に!という流れで取れるものは取ってみようという感じで育休取得しました.


色々バタバタしていて2月からラジコンもできていない状況です

今年は全日本に出るのも難しいかな~という感じ…

ラジコンに取り組むスタンスも変える必要があるタイミングなのかもしれませんが,今までのラジコンの成績も納得できているものではないのでやり方を見つけて続けていきたいと思っています.


さて育休中ですが24時間常に育児をしているわけではないです

しかも仕事をしているよりは時間に余裕があるので履修したかったモーター制御について勉強する時間にできました

 ホールICの波形をマイコンで取得しオシロで計測している様子
いよいよオシロスコープも導入してしまった

前回の記事の車高ゲージの開発もプログラミングの勉強も兼ねてということでArduinoに触れてみようということでやっていました.最終的な目標はモーター制御です.


今までのモーターの検証記事の制御方式はラジコンのESCがしている制御とは異なるもので効率や出力には乖離が出てしまっているものです.

世の中のハイブリッドカーやEVカーがしている制御をラジコンのESCにも組み込んでみようというのが今のモチベーションです.


いろんな機能をステップバイステップで実装しようとは考えてますが

最終的にやってみたいことは下の図のような考え

自分の経験したカテゴリーのラジコンカーはブレーキングとステアリングがオーバーラップした操作が必要になっています

タイヤの縦と横グリップを感じながらブレーキを弱めながらステアリングを切り込む…といった操作が必要です.



袖スタ反時計回り時代の左下ヘアピンでのチーヨコN村氏のデータロガーの波形

上段はスロットル(オレンジ)、ステアリング(青)波形
中段はヨー角度
下段は横G
横軸はすべて時間です.

分かりやすいように赤点線のタイミングからからブレーキを弱めてます.

そのタイミングでステアリングは左にほぼ100%フル転舵

ヨーはステアを少し左に切った4.9秒ときに大きく出て,いったんリアグリップが釣り合う5秒時点でほぼゼロに戻り,赤点線以降は二次旋回的な感じでじわじわヨーが出ています

横Gは4.9秒のヨーが出た後少し遅れて5.05秒ぐらいでピークを迎えてその後ヘアピンが終わるまで続きます.


エキスパートドライバーは何を判定して赤点線からブレーキをリリースしているのか?

これについてはまだ解き明かす必要はありますが

Gセンサー、ジャイロセンサーからフィードバックをしてエキスパートドライバーのようなブレーキリリースをできるようになるESCができればいいなと考えています.

今考えている制御ではブレーキ側のトルクも制御できるので

Gやヨーを検知して理想のブレーキリリース量と比較→モーターのブレーキトルクを制御してターンインでの操作を簡単にできないかなと考えています.

ブレーキでの電力自体は回生でバッテリーに戻す制御も併せて実施…みたいな

これができればブレーキの難易度が下がりそう


一足飛びにここまでは出来ないので今の進捗は


とりあえず簡単な制御でモーターを回したり


あとはホールICの信号からローター角度を推定するコードを書いてみたり


ハンドコーディングは全然スキルがなくて勉強中です.元々習得したいスキルだったのでモチベーションは高め

子供が小さくて家を空けるのが難しい間は集中して勉強してみようと思います



2023年1月14日土曜日

モーター性能取得の標準化


少し遅くなってしまいましたが、あけましておめでとうございます!

本年もよろしくお願いします


気分一新ということでヘッダーの画像を先日ZENで撮ってもらった写真に変えてみました

今までのは2016年のGPツーリングスポーツマンの時の写真でもう7年前…2016年が7年も前ということに驚いていますがその間にいろいろ成長もできているかなとも思います.


2022年10月4日火曜日

グリーンパークスピードウェイでROAR17.5Tを走らせてみる

今年はEPT OPENの全日本も出るので2回目の全日本となります.

今回の全日本は自分のやり方でしっかり準備をして自分の実力を出せればと思っています.

ちょっと遅いですが先週末からグリーンパークに通い始めたので先ずは今年からレギュレーションが変わったモータについて解析してみます.

流れとしては以前の記事の21.5Tを解析したものと同じです.

モータはHOBBYWING XERUN-V10 G4を購入しました


当初はチタンロータがいいのかな?と思いロータ交換をするついでにいろいろ寸法も測ります.



モータ諸元解析

今回G4に変わって見た目に特徴的なのはケースの外径がステータの外径とほとんど同等になったこと
見た目にスッキリしていていいなと思いましたがどうやって同軸を出しているんだろうとも疑問に思っていました.

80A@1000rev/minの解析結果
上の図はさっそく解析してみた図になります.動作点的には高負荷低回転ポイント
ボルトの穴部分も磁束が回っていることがわかるのでこの部分は鉄ネジを使った方がよさそうです.

参考までに外径がツルっとした形状も解析をしてみると外径部分が飽和していたのが緩和されています.
このままの状態では最大トルクの差も出ましたがネジの材質を気にしていれば問題ないかなと思います.



冷却方法の把握

以前の記事でファンのレイアウトとダクトを検討していました.

当時は角30mmのファンで吸気し角40mmのファンで排気するのが最も冷却効率の良い方法でした

今回はファンの積み方を変えていて角40mmを2個掛けしています.レイアウトはそのうち写真UPしますね

この角40mmファンも吸気排気にした方がいいのか?それともどちらも風を当てた方がいいのか?これを最初に検証しました.

結果は大差です
ファンの搭載レイアウトを変えたことで流れ方が変化しどちらも風を当てる方向にした方が圧倒的に冷えることがわかります.約30℃差はかなり大きいと思います.

消費電流もSmartLoggerを使えば簡単に求められます.結果は

Fr_吸気/Rr_排気の場合は2.46A

Fr_吸気/Rr_排気の場合は1.45A

よく冷える方が消費電流も少ないです.いいことづくめですね.

排気側ファンがうまく吸えずにファンに負荷がかかり,温度も冷えないということでしょう.

最も効率がいい冷却方法を見つけたところでギア比やロータを変えてデータを取ります.


効率マップと動作点解析

今回最もやりたかった解析と実走データを重ね合わせてみます
30820417ロータ(12.2 チタン) ギア比5.13
最初はギア比5.6ぐらいから走らせ始めましたが効率マップはすでに検討済みだったのでSmartLoggerで回転数を睨みつつギア比5.13に落ち着きました.

解析で求めた効率マップに青プロットの実走データを重ね合わせています.
概ね効率70%以上のところで走っていますが低回転高トルク域でやや効率が落ちています.
低いところでは効率は50%台に落ちてしまっていますね.
径の小さいロータでかつシャフトがチタンということもありトルクを出すために電流を吐いてしまい銅損が悪化したのかと思われます.

30820444(12.5鉄シャフト純正) ギア比4.98


30820444(12.5鉄シャフト純正) ギア比4.6

※出力アウトラインから実走プロットがはみ出しています.今のところ原因不明…グリーンパーク特有の下り坂が原因か

ほとんど丸一日ギア比を変えたりロータを変えたりした結果, 思いのほかよかったのが鉄シャフトのロータ
鉄シャフトだとシャフトに渦電流が発生
→ロータシャフトが加熱
→マグネットが加熱してしまい磁力が低下し出力低下
となりますが,今回の場合はそれよりも動作点を低回転側に移動しそもそも渦電流を低減させたことのメリットの方が大きい模様

チタンシャフトを使った時のように低回転高トルク領域の非効率部分を使わずに走れています.
ギア比4.98では少し回しすぎで4.6は低回転の非効率部分に足を突っ込んでいるので間ぐらいに解がありそうですね

実走時の昇温データ
青プロットの鉄シャフトギア比4.98は途中でボディを巻き込んで走行中断
オレンジプロットの鉄シャフトギア比4.6は200秒過ぎでクラッシュしてしまい走行を止めています

そこまでのデータを見ても鉄シャフトのほうが温度が低くなっています
ただテスト時間が15~16時半頃と外気温変化が激しい時間帯なのでこの辺りは追加検証が必要そうです.
ただ鉄シャフトのデータは結構取れたので次はチタンシャフトのデータの拡充をしてみようと思います.

走らせたフィーリングとしても鉄シャフトのハイギア方向のほうが走らせやすくていい意味でパワフルなのでスロットルを「探れる」フィーリングでした
チタンシャフトはトルクのスカスカ感がありどうしてもガバ握りしてしまいモータやタイヤを保たせにくい感じです.

次回の宿題項目

モータ温度/電圧/電流のデータ
赤がチタンシャフトギア比5.13/グレーが鉄シャフトギア比4.6
4行目は電流のロガーデータ

予想では鉄シャフトのほうが電流が低くなるハズだったのがむしろかなり高くて20Aほど吐いている

LAPごとの平均電圧 青がチタンシャフト,緑が鉄シャフト

電流を吐いているのでLAPを経るごとに電圧の低下も大きくパワーダウンが起こっています.
実走ではあまり気にならなかったですがデータ的にはトップスピードの低下が顕著になっています.

グリーンパークはホームストレートが下り坂なのでこの辺りはあまり気にしなくてもいいのか
この辺りは5分のトータルタイムをきっちりデータを取ってみて判断しようと思います







2022年8月17日水曜日

袖ヶ浦スタジアムでROAR21.5Tを走らせてみる

 袖ヶ浦スタジアムの月例レースでは4月のレースからROAR21.5Tでのレースとなり自分もその規定に則り走らせていました.

去年の12月の記事にもROAR規定のモータの準備をあげていますね


実際に購入して走らせたフィーリングとしては従来のJMRCA17.5T規定のものより後半のパワーダウンを感じる傾向にあります.

スペックの違いとしては

・T数ダウンによる出力低下(トルクはやや向上するはず)

・積厚減少によるトルク低下

・抵抗値減少

・磁石サイズダウン

抵抗値が減っているので常温状態では電流さえ流れれば磁界が発生し出力が出るものの,コイルが高温になると抵抗値が増加し電流が流れず磁界が減少しパワーダウンといった理由でしょうか

更に磁石の内径も大きくなり磁石体積も減っているのでさらに温度に対しての感度があるはず.

これは物理現象でレギュレーションを守ったモータであればどのメーカーでも程度の差はあるにせよ同様の傾向かと思われます.

ということで袖ヶ浦スタジアムを21.5Tで走らせたデータからROAR21.5TをJMAG-expressで解析して適切なギア比や電気進角を確認してみようと思います.


先ずはJMAG-Expressでモータをモデリング
JMRCAのものとティース部形状が若干異なりティースの幅が広がっていました.
ティース形状はモータの特性を決める要の部分になるのでいろんなメーカのを確認して解析してみたいですね
ひとまずこれもモデルに反映します.


色々設定をして効率マップを出力
本家のJMAG-Designerよりも融通は利かないけど工数は圧倒的に短く効率マップまでたどり着けます
正直ここまでは解析してもあまりうれしいことはないですが,SmartLoggerで実測した走行データを重ね合わせてみます

プロットがあるところが実際に袖スタを走らせた時の動作点です
実車の開発をするとこういうグラフをよく見ると思います(WTLCやJC08とか)
同じような評価でこのグラフを見てみると

回転頻度が高いところは比較的効率のいいポイントで走っています.ギア比は5.5なんですが割といいところみたいですね
ただ高回転側のプロットは効率が40%台で走っていて60%は熱として捨てています
ホームストレートやコース右側セクションの比較的速度が乗るところの動作点ですね
ギア比的にもいいところなのでここは仕方ないので冷却で頑張るしかないと思います.

思ったより効率が悪いのは中速からの緩減速時
減速Gが出ると比較的効率良いところに動作点が移動しますが,スロットルをオフにしただけみたいなところだとあんまり効率よくないですね
この辺りは実はドラッグブレーキを入れておいた方がモータ温度が下がるのか?これは今度検証してみようと思います.


さて周回数の後半にもなるとモータ温度は結構上昇しています
その時のモータのトルクー回転数は以下のようになります
2周目と5分後の17周目の比較
縦軸のトルクはもちろん減っていますが思ったような差ではない…むしろタイヤやほかの因子も入っているような気がする
明確に異なるのは横軸で高回転域ですね

縦軸電圧、横軸LAP数のトレンドデータ

バッテリー電圧が減少すると高回転まで回せないのがROAR規定だとモロに影響を受けるんでしょう.
この辺りは弱め界磁制御ができれば回避できないかな~と思うんですがね.レギュレーションでもこの辺りの規定無いわけですし
ESCのマイコンも32bitらしいのでROM次第では実装できないかなと

ESCの制御コードの開発になるのでまだひとまず妄想ということで


今回のJMAG-Expressで面白いマップもエクスポートできました.
最大出力制御時の電流進角マップも出すことができます
進角マップ
ふむふむ15krpm程度までは進角20°ぐらいでそこから徐々に進角を増やすと最大出力なのね
これはすぐにできるので次回走行時に試してみようと思います.

2021年12月16日木曜日

ROARモータレギュレーションへの準備

 来年の全日本のモータ規定がJMRCA独自規格だったものがROAR規定になるようです.

レギュレーションの決まる経緯やモータの認定は正直そんなに興味がないのでここには書きません.

ただ来年度の規定はこうします!という公式なアナウンスはなるべく早く欲しいですね.準備期間的にも


JM→ROAR化で同じターン数の場合速くなると聞いた上に,実際にROARモータをテストしている場面にも出くわしていて速いなぁと感じたので実際に自分がモータを購入する前にシミュレーションでいろいろと準備しようと思います.

ワークスやサポートドライバーの方々のセットアップシートが出揃わない中で、モータを買って燃やしましたとか減磁させました等は嫌ですからね

今回は仕事で使って便利だったツールでJMAG-Expressを使用して出力や進角特性を解析してみます.


各部の寸法や巻線方法、通電方法を入力するだけで回転数とトルクの関係や効率、熱解析まで実施してくれます.しかもこのツールは会員登録だけで使用することができるのでかなり便利なツール

JMAGユーザーや有料会員になるとより詳細な解析を実施できますが,ラジコンモータの設計者ではなくあくまでユーザーなので無料の機能だけでも十分な評価項目になります.

さて情報収集して得られたJMとROARの大きな変化点が下の表になります.

これに加えてステータ外径が少し小さくなり軽くなっているみたいです.

積厚変化もあるみたいですがROAR規定を眺めても積厚の項目が書いてなかったのでとりあえず同じ寸法と仮定しています.


これだけの情報では解析できないので手持ちのモータを分解してみました.


ドナーは約半年ほぼ毎週酷使したHWの17.5TJMRCAです.一度ファンが止まってる状態で5分間走行もしてしまいかなり高温になってしまった履歴があります.巻線も真っ黒ですね、、

最近2分過ぎから極端にパワーが落ちてくるのですが、ロータを交換しても改善されないのでステータに原因がありそうです.

モータ缶からステータのみ取り出し,ABC相のバスバーCOMPと銅のリングをニッパーを使って切断.

この段階で左側の銅のリングは中点であることが判明.このモータはスター結線ということがわかりこれもJMAGに入力します.

巻線を解して外していきます.今まで機械巻きだと思っていましたが,ティース先端の形状から手巻きっぽいですね.生産数から設備投資をするよりも人が作ったほうが安いのもありますが,ステータコアの形状からかなり性能に振った思想なのでそもそもの構想が手巻き前提だと思いました.

巻線の占積率もかなり高いです.絶縁はステータコアの緑の粉体塗料と相間絶縁の絶縁紙が入っていました.


中点には2本の巻線が並列に接続されており2パラの巻線パターンということがわかります.

※上記の数項目は分解しなくてもよく観察すれば分かる項目なので決定的なノウハウではないと考えております.これはノウハウだな、、ってところは記載していません


完全に分解してバスバーCOMPの裏側の巻線の絶縁被膜が炭化している部分を発見

うまくファンの風が当たらない部分で、高温になり絶縁被膜にダメージが及んだんでしょう

常温近くでは絶縁できているので機能するが,高温になると絶縁性能が極端に低下しこの部分だけ地絡気味になりパワーダウンしていたんでしょう



ということでステータコア単体になったので各部の寸法を測定しました.

ステータコアの形状は同一と仮定して各項目をJMAG-Expressに入力し解析した結果が下記になります.

横軸回転数も出せる神ツールです.普通のJMAGだとMATLABに計算させたりしないと出てこない項目

出力は銅損が減っている分ROARの17.5Tが飛びぬけて高く解析していませんがJMの13.5T並みなのかなと
またROAR21.5TとJM17.5Tはほぼ同等の出力が出ていることがわかります.
トルクや最大効率点がROAR21.5Tのほうが高回転側にシフトしておりJM17.5Tと比較すると少しローギア気味で運用するのが良いのかと思います.



JMRCAスペックでの電気進角違いでの各出力特性とトルクベスト時の進角特性です.
ラジコンモータは機械進角もついてて,設計位相角がよくわからないのでとりあえず電気進角のみです.

トルクベストになる進角はほぼリニアな特性になっています.
ターボ進角を付けずにブースト進角のみで使ってる人を見かけますが理にかなった使い方なんだなと思います.

ここからROARモータの特性

ROAR 17.5Tの特性


ROAR 21.5Tの特性

どちらもベスト進角となる回転数の特性がJMRCAモータと異なっています.
ロータ磁石が薄くなったことによるパーミアンス係数の変化と抵抗値の低下によりこの差が出ているものと考えられます.

どちらも15krpm程度までは線形に進角を上げてもよさそうですが,それ以降の回転数では傾きが鈍化しています.
なのでROARモータでは途中からブースト進角とターボ進角を併用したほうが綺麗にトルクを出せるのではないかと思います.

15krpmを起点にしてもよいかというのは機械進角にもよるのでこの辺りはsmartloggerを使いながら実走でテストすべきかなと思います.